「新版1945年8月6日」(伊東壮)

ヒロシマへ、黙祷

「新版1945年8月6日」(伊東壮)
 岩波ジュニア新書

戦争を知らない世代として、
ずっとヒロシマのことを
考えていました。
「いつか行ってみたい」と
若いときに考えていましたが、
実現させることが
できませんでした。

八年前、
中学校3年生の学年主任として、
京都・奈良・大阪に加え、
広島を3泊4日の修学旅行最終日に
設定しました。
広島訪問を修学旅行に
加えたことに対して、
一部の保護者の間からは
批判的な意見が出されました。
「楽しいはずの修学旅行に
戦争の跡地を見せるなんて」
「だったらUSJで遊ばせて欲しい」等々。
家庭にはその意義を粘り強く説明し、
実現にこぎ着けました。
子どもたちは半日の見学でしたが、
実に多くのことを学び、
帰ることができました。

15歳の段階で、
私たちの国の戦争の歴史にふれることは
大切であると考えています。
日本にはこのような
悲しい歴史があるということ。
その歴史を踏まえて
国際社会での役割を
考えていかなくてはならないこと。
原子力は兵器であれ発電施設であれ
人間の手では御しきれないこと。
それを考えるきっかけを、
大人が意識してつくりだして
いかなければならないと考えます。

そう言いながらも、
修学旅行に組み入れるのは
困難が大きいのも確かです。
だからこそ、
読書の役割が大きくなります。

岩波新書に最適な一冊があります。
本書「新版1945年8月6日」です。

単に原爆の悲惨さや広島の惨状を
述べているだけではありません。
アメリカが原爆投下に踏み切った背景、
ナチスドイツとアメリカの開発競争、
ソ連参戦が与えた影響、
科学者の関わりと
原爆の大まかな原理等、
原爆が広島と長崎に
落とされるに至ったプロセスを
丁寧に説明しています。
また、戦後の東西冷戦下における
核の扱われ方についても取り上げ、
核廃絶への道筋についても
解説してあります。

岩波ジュニア新書からは、
このほかにも戦争についての本が
数多く出版されています。
そのどれもが感情論に走らず、
懇切丁寧な説明と多角的な視点の提示が
なされてあります。
ジュニアにとどまらず、
広い世代で読みつないでいくべきものと
考えます。

さて、今年で戦後75年。
その教訓を風化させずに
後世に伝えるのは、
今を生きている私たち全員の
責務であると考えます。
今年の八月も、
さまざまな思いを抱きながら
ヒロシマへ黙祷を捧げたいと思います。

※章立ては以下のようになっています。
1 天地のくずれた日
2 戦争のなかの暮らし
3 被爆の苦しみ
4 原爆はなぜ広島・長﨑へ
5 核廃絶への道のり

(2020.6.23)

自然さんによる写真ACからの写真

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